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福島市、小学一年生の入学式に思う

3日前には、ユーロニュース、スイス、ドイツテレビで、福島市のある小学校の晴れがましい入学式の様子が報道された。かわいらしい子供たちは、名前を呼ばれ、ハキハキと大きな声で返事をしていた。Tagi紙にも最初の政治欄一ページにこの入学式の子供たちの大きな写真が載った。

また、津波を乗り越え生き残った者だけの悲しい中学校卒業式の様子も何度か映った。

今回の悲惨な映像を見続けてきたこちらの人々には、このような子供たちの入学式は、具体的な新しい希望に映ったに違いない。そして前途多難な事を知りながらも、安心感と、日本語で言うとがんばってねと励ましたに違いない。

私はしかし日本のこの様な光景を見ると、ある現実を考えてしまい、いつも悲しくなるのだ。この元気ではきはきした子供たちの何人かは、いつのころか無口になったり、自分の気持ちや意見を言わなくなり、いじめたり、いじめられたり、引きこもりになったり、無気力、ニートになったり、自殺するものもでてくる。

数年前、一度、中高生徒に施したアジアのアンケートで、友達を作るのが学校へいく大きな目標だと答えた日本人が特に多かったというものだ。それだけ孤独な子供が多いという事になる。

こちらでも当然ながらおなじ問題、さらに、暴力、都会では麻薬などハードなものも多い。日本の引きこもりに対して、表に出てくる社会問題である。

この問題はあまりにも大きく複雑なようだが、私は、30年近く、この地方で、芸術、文化、教育の現場で仕事をしてきたので、違いが少しはわかるといえる。45年前の日本の教育を受けてきたものには、180度、目線を変えるために苦労をしたからだ。

自己責任の持てる子供ということにいて一言だけ。一理あると思ってくださる人がいるかもしれないので。

例えば、「いじめ」など、どの時代にも、どの国にもある。こちらでは、いじめる子より「いじめられる子供」が問題であり、一番先に呼び出され家族ぐるみでその原因などが分析され、相応の対策がなされる。「いじめられる子供」は、将来、自分をいじめるものを次々苦情したり、訴訟をしていくことは難しい。そして被害者として生きることをやめ、それに打ち勝つ力を小さい時から養っていく訓練をさせる。

またいじめる子供の言い分もクラスで話し合う。先生個人の負担にならないように、家庭、社会機関が大きく参加してくれ、秘密ごとにはならない。

日本では、不完全なメディアを非難するが、不完全でないメディアなどない。デマなら訴えればいい。こちらは、言論の自由であるから、メディアにだまされる個人が非難される。それだけ自分で情報を得て、自分で判断出来る能力がなければならないとされる。

特に今回は、日本が欧米の過剰報道を非難するが、具体的なデーターを秘密にする体質を持つ日本に対しては、各国それぞれ、自国の国民の安全を考えた場合、ワースト想定をする以外なかった。日本の秘密主義はもう有名だからだ。欧米と日本の原発に対するメンタリティーの違いを日本人は知っておくべきで、自分たちの情報を何に頼るか、自分で解決すべきであって、他国を非難すべきでないと思う。

またこちらでは日本のように、これは「欠点」とか「短所」と決め付け(将来それが成功の元になる事もある)、改めさせるとか、反省させるとか言う事は、こちらの近代的教育の場では珍しい。昔私は何でも「反省せよ」といわれ続けたこと思い出す。

私たちの間では、生徒に対しての専門的なフィードバックをする時も、失敗は失敗として対処するが、大体において長所しか指摘しない。この長所をもっと発展していくように勧める。そのためには自分の短所を克服していかなければならない事に大体気がつくからである。

ひとつ例をあげると、ラーメン屋さんが、4軒並んでいるとする。皆それぞれ自分のラーメンが一番おいしいと根拠をあげ宣伝する。それぞれ自分の強みを知っている。非常に厳しいビジネスなのだ。しかし何かに長けたラーメンは、他の欠点は愛嬌になると許されることが多い。

日本の場合は、一般に、学校にいる間は、ラーメンの麺はこうあるべき、スープはこうあるべきと習い、おなじラーメンを作りみな安心する事になる。社会に出たら、自分独特のラーメンがすぐ問われる事になり、それを準備し遅れたものや、突然自信を失ったりするものも現れる。自己責任とかいわれる現状にも向き合うことになる。そんな事情もあるかと思われる。

欧州では大体において、10人10色の主張が許され、また他の色も寛容していく練習が小さいときから行われている。喧々囂々に見えるが社会はそれでも成り立っている。

今回の事で、日本以外にも国があり、いろいろ違った対応をする国、隣国、遠い国があることいやでも自覚したはずだ。そして、日本人と違う目線でものを捕らえ、考える人が沢山いる事を知ってほしいと望む。その中で新しい目線で自国を見つめ、自信を持った子供たちに育ってくれればと願う。

福島の入学式、卒業式の動画を見て、これから日本の再建を背負っていく子供たちにこのような思いを寄せるのは私だけだろうか。この子供たち全員が元気で、自分の才能を伸ばし日本を立て直してくれる事を心底から望んでいる。

チューリッヒ     F. S

by swissnews | 2011-04-10 21:36 | 教育・宗教・人材 | Comments(0)

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